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INTERVIEW

新しいクルマの持ち方を提案したい。
DeNAとSOMPOのジョイントベンチャーでつくる、次代のクルマ文化

渡邊 直樹/大石 優介 渡邊 直樹/大石 優介

今年3月、DeNAとSOMPOホールディングスによる新会社が2社誕生しました。そのうちの「DeNA SOMPO Carlife」では、6月より新サービス「SOMPOで乗ーる」を提供しています。

これは、月々の定額制で新車を持てる“クルマ定額サービス”。定額の支払いには、クルマ代、税金、点検・車検代、メンテナンス代、保険料、諸経費など全てが含まれています。そんな新サービスに関わるのが、同社 事業本部 事業推進部 シニアマネジャーの吉田守博さんと、同社 営業本部 営業サポート部 営業サポートオフィス マネージャーの太田直樹さん。「新しいクルマの持ち方を提案したい」と話す2人に、新サービスの目的や新会社の様子を聞きました。

吉田 守博/太田 直樹

株式会社DeNA SOMPO Carlife
事業本部 事業推進部
シニアマネージャー

吉田 守博
Morihiro Yoshida

株式会社DeNA SOMPO Carlife
営業本部 営業サポート部
営業サポートオフィス マネージャー

太田 直樹
Naoki Ota

第一弾として、新車のサブスクリプションサービスをローンチ

ーーまずはDeNA SOMPO Carlifeが生まれた経緯を教えてください。

太田:私はもともと損保ジャパン日本興亜の社員です。損保ジャパン日本興亜は、自動車関連の保険販売が約5割です。今まではクルマを所有したい人へ保険を届けていましたが、最近ではカーシェアなどの保険込みのサービスがどんどん普及し、クルマを取り巻く環境が“所有”から“利用”へとシフトしています。そんな中で、これから保険を届けるのは、私たちのような保険を専業としている会社ではなく、モビリティサービスを取り扱っている会社になっていくのではないかと。これからはモビリティサービスなど、グループの強みやアセットを活かしつつ、新しいことをしたいと考えていました。

吉田:その中で、DeNAとのジョイントベンチャーが立ち上がった形です。今回面白いのは、自動車業界で大きな地盤を持っていたSOMPOホールディングスと、まったく異分野であり、ITやデジタルに強みを持つDeNAが手を組んでビジネスを始めたことです。

 SOMPOホールディングスは1300万人の自動車保険契約者を抱えており、そこで培われたリアルの信頼関係に、我々がデジタルで新たな付加価値をつける。そうして、自動車業界の価値観を変えていく。リアルとデジタルの融合による、チャレンジングな試みだと思っています。

太田:6月から「SOMPOで乗ーる」というクルマ定額サービスをスタートしました。また、もう1社「DeNA SOMPO Mobility」を立ち上げ、DeNAオートモーティブが運営してきた個人間カーシェアサービス「Anyca」の事業を引き継ぎました。

ーー今回は「SOMPOで乗ーる」について教えてください。どんなサービスなのでしょうか。

吉田:契約期間において、月々定額の支払いで新車を持てる“クルマ定額サービス”です。国産車から輸入車まで、さまざまな車種の中から好きなクルマを選べ、通常クルマ購入時に必要な頭金や車検・メンテナンス費用などの大きな不定期な出費がありません。クルマを所有する場合、これまではその価値のすべてを“買う”のが普通でしたが、こちらは携帯電話の通信料と同じイメージで、自分たちがクルマを使う期間だけ、定額料金を支払うサブスクリプションサービスです。

太田:定額の中身にもこだわりがあります。クルマ代や税金、保険料などはもちろん、故障発生時の修理費やメンテナンス時の代車費用など、フルパックのプランを用意。急な出費や月々の増減が限りなく少ない設計にしています。

吉田 守博

クルマの「所有」から「利用」への転換で、ハイランクなクルマを持てる?

ーーこれまでの新車を買う文化とは違いますね。

太田:そうですね。私たちがやりたいのは、「新しいクルマの持ち方」の提案です。新車を買うと頭金もかかりますし、数年に一度の車検や急な故障など、不定期で来る大きな出費がありますよね。それがクルマを買う際のハードルになっています。ならば、定額で持つ方が見通しは立ちやすく安心ですし、ライフプランを立てやすいのではないでしょうか。

吉田:“クルマ選び”もこれまでとは変わってくるでしょう。通常、よほどクルマに詳しい方以外は新車を買う際、その値段は「将来、手放す際の下取り価格」まで考慮されていないと思います。対して、この定額制は、初めから期間終了後の予想車両価格を予め差し引いて、残りのクルマ代を算出し、月々の金額を決めています。つまり、最後の売却分だけ買うよりお得になるので、少しランクの高いクルマを選ぶこともできるんです。実際にお見積りしていただくとびっくりするような事例もありますよ!

太田:たとえば軽自動車を買う際、片側のみ自動ドアの車両を両側自動ドアにすると、オプションで10万円近くかかることがあります。それであきらめるケースも多いですよね。ただ、実は将来の売価まで考えると、中古車市場では両側自動ドアの売れ行きが良いので、売価は高くなる可能性も。そこまで含めて計算すれば、必要な金額に大きな差はないかもしれません。

吉田:「所有」から「利用」へとクルマの持ち方を変えることで、新しい考え方や価値観が生まれると言えます。さらに、本サービスでは定額制で乗っているクルマを個人間カーシェアサービス「Anyca」で他の方とカーシェアすることもできるので、維持費をより下げることもきます。

また、私たちは、一人で何台もマイカーが持てる世界を描いていて、たとえば「SOMPOで乗ーる」でミニバンを選んでいただいたドライバーが「Anyca」でカーシェアしていたとします。普段はミニバンに乗っていますが、天気の良い日には家族でドライブするために、4シートのオープンカーを「Anyca」でシェアしてもらう。このように、気分やシチュエーションに合わせて、幅広いバリエーションのクルマを自由に選べる世界を描いており、このサービスがそのきっかけになればと思っています。

ーーサービスを始めての感触はどうでしょうか。

吉田:完全な新規サービスですが、これだけ垂直的に、1年目から取引のある事業ができたのはうれしいですね。それは、やはりSOMPOが持っていたリアルな代理店ネットワークがあるからこそだと思います。

太田:SOMPO側としても、このサービスの保険部分だけを売っているわけではありません。サービスそのものの普及や認知、契約を担っているので、上流サービスを提供したうえで、取扱代理店を通じてサービスに合致した保険の提案ができるという、新たな価値提供に挑める意義を感じています。

吉田:私はDeNAに来るまで、自動車会社や、自動車業界のコンサルティングの会社に勤めてきました。大きな産業だけに変わりづらい領域だという点はよく理解しています。ただ、今回のジョイントベンチャーで感じたのは、比較的新しいプレイヤーである我々DeNAとSOMPOホールディングスのようなすでに多大なアセットを持つ企業と組むことでこそ、実は一気に変化するものを作りやすいということ。めちゃくちゃ面白いです。

 マイカーは日本に約6,000万台ほどあります。もしその使い方や価値観を変えたら、日本のカーライフはさらに良くなるのではないかと。その意味で、SOMPOホールディングスはマイカーを持つお客さまへのネットワークがあります。それは、日本中のマイカーの“新たな価値”を提案できるチャンスとも言えるのではないでしょうか。

太田 直樹

自動車業界の価値観を変える。大きな「こと」に両社で向かう

ーージョイントベンチャー自体には、どんな手応えや感触を持っていますか。

太田:SOMPOホールディングスは、これまで子会社こそ持ってきたものの、ジョイントベンチャーは初の試みです。私は吉田とサービス全体を見ながら、SOMPOの営業マンとDeNAのつなぎ役も担っていますが、今の感触としてはうまくいっているのではないでしょうか。

吉田:やってみて思ったのは、「こと」に向かう大切さです。「こと」に向かうとは、DeNAが全社員に必要な共通の姿勢や意識として掲げている「DeNA Quality」の1つで、「本質的な価値を提供することに集中する」という考え方なのですが、今回のジョイントベンチャーは、まさにそれが重要だと思いました。

 もともと違う企業ですから、どうしても社風や文化の違いはあります。ただ、事業を進める上で一番大切なのは、「お客さまのために良いサービスをつくる」という「こと」のために極力同じ目線で全員が一丸になることです。みんなが「こと」を目指すと、細かな違いはあっても、うまく両社が力を合わせられるのではないでしょうか。

ーーそういった意識が、シナジーを生む要素になると。

吉田:はい。ですので、例えば、経営関係者の定例会議の議事録や資料も社員にすべて公開しています。あまりこういった事例って他の会社ではないですよね。これにより、トップが何を考えどんな視点で見ているか、高い視座で事業を捉えられるのではないでしょうか。それが、事業の先にある大きな「こと」に、全員を向かいやすくさせているのだと思っています。

ーーでは最後に、これから事業を進めていく上で、どんな人と一緒に働きたいでしょうか。

太田:大きく変わる自動車業界の中で、サービスにより新しい文化をつくりたい人がいいですね。新しいクルマの持ち方、自動車の価値観を考えながら、文化をつくることに魅力を感じる人は向いていると思います。吉田の話ではないですが、誰と話しても、会社として何を目指しているか、同じ思いを言えるような組織が理想です。

吉田:クルマという高額な消費財を扱うからこそ、何かを変えるのは簡単ではありません。加えて、自動車業界のいろいろなステークホルダーの方と話す必要があります。その分、困難もあるでしょう。ただ、それらにしっかり向き合い、少しずつでも変えることに楽しさを見出す人が良いと思います。

 先ほども言った通り、自動車業界は変革が難しいと個人的には感じています。だからこそ、「やりたいけどなかなかできない」と悩んでいる人もいるでしょう。実は密かに、メラメラと志を持っている人も多いはず。自分もそうでしたから(笑)。その点、この会社は自由に発想できて、アイデアを議論できる環境です。志を持つ人が、新しい未来を築けるチャンスもあるのではないでしょうか。

取材日: 2019年7月4日