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山下 淳 山下 淳
INTERVIEW

オートモーティブ事業本部
シニアマネージャー

山下 淳
Atsushi Yamashita

移動に悩む人を救うため、自動車メーカーからサービスレイヤーへ。
3つの転機がもたらした思い「日本の交通への貢献」

あらゆる人やモノが、安全・安心に移動できる世界を。DeNA オートモーティブ事業本部が掲げるコンセプトの裏には、世の中には行きたいところに行けない人がたくさんいる、移動が当たり前ではないことがたくさんあるという「交通への危機意識」があります。

その危機を本気で解決しようと、自動車メーカーからDeNAに転身した人がいます。オートモーティブ事業本部の山下 淳(やました・あつし)さんです。彼は、メーカー時代に「交通危機を解決するのはモビリティサービス」だと感じ、サービスレイヤー側に回ることを決意しました。一体どんな交通危機を感じ、なぜ今の道を選んだのでしょうか。

地方のバスに乗って感じた「日本の交通が危ない」

ーーメーカーから転職されたということで、これまでのキャリアを伺っていければと思います。

そうですね。実は大学時代からこの分野と関わりがあって、私は環境情報学部に所属していたのですが、研究室で電気自動車の研究を行っていました。ガソリン車を電気自動車にすると環境にどれだけ好影響かシミュレーションしたり、実際にガソリン車を電気自動車に改造したりしていました。2000年に卒業したので、当時はまだ「電気自動車って何?」という世の中の意識でしたね。

ーーそこから自動車メーカーに入社したのですか?

そうではないんです。最初は環境関連の仕事をやりたくて、環境コンサルティングの会社に入りました。ですが、コンサルティングはどうしてもクライアントの意向ありきで進むので、次第に自分が主体的に動けて、しかも環境とつながるものに携わりたいと考えました。ここで浮かび上がったのが自動車メーカーです。3年半ほど経ってから国内のメーカーに転職しました。

ただ、最初は品質戦略や品質評価手法を作成するなど、今のオートモーティブ領域とは縁遠い仕事を6年ほどしていました。

転機となったのは、そのメーカーが電気自動車を発売することになり、部門の社員を社内公募で集めたことです。私も手を挙げて、電気自動車関連の業務に携わり始めました。

ーーここで今とのつながりが出てきたんですね。その時はどんな仕事を?

国や県といった行政への働きかけです。これから電気自動車を販売・普及させるにあたり、充電インフラの推進や補助金の交渉など、環境の整備を依頼しました。

実はこの時、「日本の交通が危ない」と真剣に感じ始めたんです。

ーーどういうことですか?

地方の自治体に赴くことが多かったのですが、その土地での交通環境を調べようと、なるべくバスなどの公共機関を使いました。ただ、地方のバスは数時間に1本というケースも珍しくありません。そして、そのバスには地域の人がたくさん乗っていました。この光景を見て、「移動手段を求めている人はこれだけいるのに、交通機関は整っていない」と痛感したんです。もっと便利で、簡単で、安く移動できる手段があればいいと思い始めました。

山下 淳

メーカー時代に「モビリティサービス」の可能性を感じる

ーーそんな思いを抱きながら、メーカーでは電気自動車の推進役を担っていったんですね。

はい。やがてメーカーから電気自動車が発売されたのですが、その後に2度目の転機が訪れました。電気自動車をサポートするビジネスの立ち上げを任されていたときのことです。

バッテリーの二次利用や電気自動車専用保険の発売、充電にまつわるサービスなど、さまざまなビジネスをやったのですが、転機になったのはカーシェアリングサービスの立ち上げでした。

超小型モビリティの電気自動車を使った地域限定カーシェアで、企画から半年ほどで実施に至りました。そして、実際に利用した人の反応を見る中で「これからの時代に必要なのはモビリティサービスではないか」と感じたんです。

ーーそれは、先ほど出てきた「交通の危機」に対する解決策として?

そうですね。このカーシェアリングはインターネットから車を予約できるシステムで、A地点からB地点へのワンウェイ(乗り捨て)が可能でした。当時狙っていたのは「誰でも、便利に安く使えるサービス」で、それを具現化できたという思いがありました。

ローンチ後は、地域内で多数の人が利用し「こういうモビリティサービスを待っていたんだ」というユーザーの声も相当数聞かれました。なかには毎日、通勤で利用する人もいたほどです。そこで世の中が変わりつつあるという意識が芽生えましたし、私なりに交通危機を解決する可能性が見えてきました。

とはいえ、自動車メーカーはモビリティサービスよりも車の販売が重要なので、これらのサービスは次第に縮小していきました。私もその後に部署を異動し、2015年から自動運転やコネクテッドの部門に配属されます。そして、そこで3度目の転機が訪れました。

ーーその転機とは?

私は自動運転の商品企画を担当していたのですが、そのとき知ったのがDeNAでした。モビリティサービスを本気でやろうとしている会社を知り、当時面白いと思いました。メーカーとしてモビリティサービスをやるのではなく、サービスレイヤーとして携わる形もあるかもしれないと、うっすら感じましたね。

山下 淳

オートモーティブ事業推進のため、国への働きかけを行う

ーーただ、その後もメーカーでしばらく働いたんですよね?

はい。また部門を異動してバッテリーの戦略や外販を行っていました。1年ちょっとですかね。実はそのときも、常にモビリティサービスが出来ないか考えていたのです。副社長にも話したほどで(笑)。熱意はずっとありました。ただ、やはり自動車メーカーとしてはそちらを推進するのは難しかったんですよね。

こういった流れの中で、サービスレイヤー側に回ることを強く考え始めました。そして、2017年9月にDeNAのオートモーティブ事業本部に移ります。

ーーそんなストーリーがあったんですね。

だいぶ長くなりましたが…(笑)。ちなみに、もうひとつDeNAに入った理由は「日本の交通に貢献したい」という思いを叶えられそうだったからです。自動車メーカーはどうしても市場の大きな海外に比重が置かれてしまいます。日本は市場が縮小しているのですから、経営戦略として仕方ありません。でも個人的には、目の前の人たちに貢献したい。そこで、日本企業であり国内事業を展開しているDeNAは魅力的でした。

ーー今はどんな業務をしているんでしょうか?

特定のチームには入らず、各チームを横断で見て、リベロ的な立ち回りとアライアンスのハンドリング、問題が起きた際のヘルプなどをしています。自分達では勝手に「オート横串チーム」と呼んでいますね。

直近で関わりが多いのは、ロボットシャトルのプロジェクトでしょうか。運転手のいない自動運転バスの実用化プロジェクトで、車両はフランスのEasyMile社のものを使い、DeNAのシステムをつなぎこんでいます。メーカー時代の経験から車の構造には詳しいので、システム改善や車両連携などのアドバイスをしています。

これらに加えて、国への働きかけや提言も重要な業務ですね。

ーーどういったものですか?

たとえばロボットシャトルが公道を走れるように、今までの実証実験の実績や安全性を国に伝えます。ナンバーを取得することが当面のゴールですね。今は公道を走れず、実証実験もエリアを封鎖して行っていますが、普通の車と一緒に走れるよう国に働きかけています。

同時に、国では自動運転を普及させるために規制緩和や指標化等を行う様々なワーキンググループがあるのですが、その一部に参加していますね。オートモーティブの分野は10年近く先を見据えるものもありますが、私は2、3年先を見て、実用化に向けて動く形です。

山下 淳

技術やサービスだけでなく、人々の意識を変えるのも使命

ーーメーカーからDeNAに転職して、今どんなことを感じていますか?

スピード感の違いには驚きますね。自動車メーカーは通常、新車の販売に3〜5年かかります。でもここは「翌月までに出そう」というケースも珍しくない。最初はびっくりしました(笑)。ただ、変化の激しいこの業界ではそのスピード感がないと遅れてしまいます。

印象的だったのは、月曜に私の提案したものが水曜の経営会議にかけられていたことですね(笑)。新しいことにも積極的に投資してくれますし、その企業文化はありがたいです。

一方、命を預かる事業なので、安全の担保は必須です。しかも私たちサービス事業者はお客様との接点なので、安全性の部分で失敗は許されません。スピード感は意識しつつ、安全のためには焦らず時間をかける。その両方が求められます。

ーー早さと慎重さ、そのバランスがこの業界では大切ですね。

そうですね。ですので、柔軟な人に向いていると思います。考え方や変化の激しい業界で、昨日までの流れが1日で一変することもあります。それに対応し、スピード感を持ちながら要所を締める感覚が必要ですね。

ーーあらためて、この業界の魅力はどんなところですか?

最先端の領域であり、IT分野でありながらモノを扱えるのは面白いですね。開発したモノがバーチャルではなく目の前で動くのは感動します。ハードのあるメーカーでモノづくりをしてきた人は共感できる部分だと思いますし、この分野でもその楽しさは味わえるはずです。

それと、やはり先ほど言った交通課題に直面する人々を救えることです。ただそのために、最先端のオートモーティブ技術に対するお客さまの受容性を高めることも私たちの役目です。たとえば自動運転は、突き詰めれば人が運転するよりも安全になるはずです。しかし、最初は「怖い」というイメージが強くあるでしょう。その人々の意識を変えなければ、いくら技術が発展しても本当の課題解決になりません。

技術やサービスを発展させつつ、お客様の意識も変えていく。そうやって、交通に困る人たちを助けていきたいです。

取材日: 2018年1月9日