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山本 彰祐 山本 彰祐
INTERVIEW

オートモーティブ事業本部
事業推進部 部長

山本 彰祐
Akihiro Yamamoto

オートモーティブにやってきた経産省の出身者。
地方の人と話して芽生えた、交通不全の解消は「私の使命」

オートモーティブ事業本部には、ゲームやIT、自動車メーカーなど、さまざまな業界からの転職者が身を置いています。そして、その中でも特に異色のキャリアを歩んできた人がいます。事業推進部 部長の山本 彰祐(やまもと・あきひろ)さんです。

経済産業省、民間のITシステム会社、個人での会社設立を経て、異分野のオートモーティブ事業本部に参加した彼は「今、心の底からやりたいと思える仕事に出会えたことは本当に幸せ」と言い切ります。

そこまで言う背景には、山本さんが地方の人と話して感じた交通課題の現実がありました。彼のキャリアを振り返りながら、この思いに迫ります。

山本 彰祐

彼のキャリア観が、経産省からオートモーティブへの道筋を作る

ーー京都大学の大学院を出て、経産省に入られたんですね。

はい。経産省は、26歳から11年ほど勤めました。数年ごとに配属が変わるので、色々な課に所属しましたね。

ある時期は会社法の制定に携わったり、ある時期は新興国の政府や機関に対して、融資や資金供与を行ったりしました。後者については、現地の鉄道や道路を整備する際に、日本がバックファイナンスを行う場合もありましたね。最近では、インドの高速鉄道計画を日本が支援していますが、そういった事業に関わっていました。

また別の時期は、地域経済政策課というセクションにいました。日本の地域経済の発展を命題にしており、インキュベーション施設を地方に作ってベンチャー企業を誘致するなどの施策を打ちましたね。地域の経済が疲弊する中で、どう盛り上げるか検討していました。

ーー経産省を辞めてからは、どちらへ?

民間のシステムインテグレーター会社へ転職しました。ITシステムの開発が主な事業でしたが、私は当時、企業に導入が義務付けられた内部統制報告制度(J-SOX)の対外コンサルティングを担当しました。J-SOXをどう企業に組み込んで、どう運用していくかをアドバイスする役割です。

ーーどうして経産省から民間企業へ移ったんですか?

よく聞かれる質問です(笑)。経産省で働いていると、ある段階で今後の自分のキャリアがほぼ見えてくるんですね。今この評価なら、10年後にはこの方面の仕事をしているとか。私は日本の社会や経済を俯瞰しながら、より国や人々の生活が良くなるための施策を打つ立場にいたかったのですが、おそらく10年後は、どうも違うポジションに着きそうだと感じました。36 歳という年齢を考えても、1度目の転職をするなら今だと思い、民間に移ったんです。

2006年のことでしたね。なかば冗談で話すのは、このとき、すでに経産省を辞めていた同期とスポーツバーでサッカーのW杯を見ていたんですね。日本代表が初戦で逆転負けした試合です。悔しくて2人でやけ酒をしたのですが、そこで同期が「ウチに来ない?」と誘ってきたのが決め手でした(笑)。もちろん、それまでにいろいろ悩んでいたんですけどね。

ーー以後はどんなキャリアを?

その会社に5年ほど在籍したのち、自分で起業しました。ウェブサイトを立ち上げましたね。SNSなどから世の中のクチコミをAIが分析し、特定のテーマでランキング化するものです。「笑えて泣ける映画ランキング」などが一例ですね。

ただこの事業はなかなか難しい部分もあり、うまくいきませんでした。しばらく個人で仕事をしていたのですが、2015年5月に「ロボットタクシー」という名前の自動運転のプロジェクトがスタートするというニュースをたまたま見たんです。

ーーロボットタクシーは、DeNAが関わっていたプロジェクトですね

そうですね。自分のキャリアからはまったく異分野なのですが、もともと自動運転は興味があって「これは面白そうだ」と。それでジョインしました。ロボットタクシーという名前のプロジェクトはその後無くなってしまいましたが、今はDeNAが行うさまざまな交通プロジェクトに携わっています。

政府と交渉し、規制をアップデートするのが役割

ーーどんな業務をしているのでしょうか。

まずは国や政府機関との交渉や調整です。自動運転などをサービス化するには、法律を変える必要が出てきます。私はもともと省庁にいた人間なので、当時の経験を生かしながら、法整備や政府への働きかけをしています。

具体的には、国内外問わず、先進事例や実証実験のデータを供給しながら、「こういう仕組み、法体系なら安全な形でサービス化できるのでは」と提案します。例として、ドライバーが車に乗らず、管制センターから遠隔で車を運転する技術も開発が進んでいますが、実は、フィンランドやオランダではすでに実践されています。そういった実例を出しながら、警察への提案も含めて交渉を重ねます。

ーーオートモーティブを発展させるために、現状の規制をアップデートしているわけですね。

今の規制の中で最新のサービスを作ると、どうしてもユーザビリティが低くなるケースが出てきます。特に交通は非常に規制が多いんですね。それをどう広げるか。規制が少し変わるだけでマーケットは一気に拡大するので、そういうことができればいいなと。

とはいえ、どんな規制も緩和すればいいわけではありません。当然、規制として必要なもの、遵守すべきものがあります。大切なのは「なぜその規制があるのか」という意味を問うこと。答えが「安全性」であれば、もちろん変えるべきではありません。自分たちのビジネスを有利にするために規制を変えるわけではないんです。

あくまで私たちのミッションは「交通不全の解消」で、そのために必要であり、かつ、既に意味を失っているような規制であれば、それを変えていく。これは世の中のためになりますし、きちんとこちらの考えに「正義」があれば、政府も他の企業やプレーヤーも共感してくれます。

ーー交通分野全体を考えても、重要な役割ですね。

そう感じます。ただし他の業務もやっていて、オートモーティブ事業はいろいろな大手企業と協業をするので、提携する際の関係性の組み立てやゴール設定なども担当します。協業先とのやりとりは、新規協業先を中心に、横割り的にだいたい見ていますね。

また、以前勤めていた会社で内部統制に関わっていたこともあり、オートモーティブの各プロジェクトにおけるリスクコントロールや安全対策も担当しています。安全が最優先の事業において、運用側がどのようにそれを守り続けられるか。安全遵守のための体系化はもちろん、体系を崩さず長期で運用する体制をつくっています。

山本 彰祐

「運転は怖い」。でも高齢者は「運転しないと生活できない」

ーー経産省からスタートして、本当に異色のキャリアですね。

そうですね。とはいえ、今は本当に心から「交通不全の解消」をしたいと考えています。

その源泉になっている体験があります。2015年、ロボットタクシープロジェクトが立ち上がった時です。プロジェクトを発表した後、各方面からたくさんのお問い合わせをいただいたのですが、なかでも多かったのが地方自治体からでした。「すぐに来てほしい」と言ってくださったところもあったんです。

実際、地方にも足を運んで、老人会や地域の集会で現地の方とも話しました。山口県の周防大島町という離島や、中山間地域にも行きましたね。そのとき、私の予想をはるかに超えるレベルで皆さんが交通課題を抱えていると感じたんです。これは忘れられない体験でした。

ーーどういうことでしょうか。

ある90代の方は「自分で運転するのは怖い。だけど運転しないと生活ができない」と漏らしていました。病院に通っている方は、病院は受付順で診察をしますから「本当なら朝一番に行きたい」と。でも「病院行きのバスが遅い時間にしか来ないんです」と話していましたね。

こんな印象的な"声"もありました。買い物に行く交通手段がない人にとって、宅配サービスの普及も重要ですが、ある高齢者は「お店を回りながら買い物をするのが一番の楽しみなんです。宅配ではだめなんです」と。こういう声は、直接話さないと聞けないものでした。

経産省の時代にも、地域活性に取り組んでいましたが、ここまで現地の人と直接話す機会はありませんでした。この時そういう機会をもらって、初めて心の底から現状を理解できました。皆さんの熱量は、私の感覚よりはるかに高かったんです。

ーー地方の深刻な交通課題に直面したということですね。

地方だけでなく、関東でも同じ課題は生まれていて、たとえば神奈川県のある地域には、高台の上にベッドタウンがあります。そこは高齢化が顕著なのですが、ベッドタウンへ入る唯一の道は急坂で狭くて、コミュニティバスくらいしか高齢者の交通手段がないんです。住人の方は「バスがないとどこにも行けない」と嘆いていました。

そういった交通課題の渦中にいる人たちは、自動運転のサービスがあれば「今すぐ走らせてほしい」と言いました。言葉にすると安直かもしれませんが、私自身、話を聞く中でオートモーティブ事業を「使命」としてやらなければと思ったんです。

山本 彰祐

つねにお客様を中心において。ゼロから未来を作っていく

ーー色々な業界に携わってきて、その中でもこの体験は新鮮だったと。

新鮮でしたね。こんなに自分で「やりたい」と思える仕事はあまりないですし、その仕事に出会えたことは率直に幸せだと感じます。自分の人生でそういう仕事の出会いが何回あるか。そう考えると、今の仕事ができてよかったです。

ーーちなみに、この業界で働いてみて、どんな能力や考え方が必要だと思いますか。

常識にとらわれないことですね。先ほどの規制の話がその典型ですが、今あるモノやルールを前提に考えていたら、何も進まないと思います。固定概念にとらわれず、ゼロから自由に考える。必要であればルールから変えてしまう。その発想が必要ではないでしょうか。

大切なのは、お客様中心の視点です。「お客様から見て何をすべきか」があくまでセンターにあって、そのために規制を変えたり新たなアイデアを生んだりする。この意識が必要不可欠ですし、それを持つ人と一緒に仕事をしたいですね。

ーーあくまでお客様の不便を解消するために、一つ一つの選択をしていくと。

正直なところ、交通業界は忖度やしがらみが少なくありません。その中で本当にお客様目線でモノを考えられ、誰にでも対等に、適切に物申していけるDeNAの存在は、非常に貴重な存在だと思っています。そういった意味で、政府や業界大手企業からも、「一緒に何かをやっていきたい」と思われる存在になっているのではないでしょうか。

その甲斐あってか、私のところには毎日のように様々な政府部局や業界大手企業からのアライアンスの依頼が舞い込んできます。日々、その方々と議論をしながら、こうやって交通・自動車の世界がダイナミックに変わっていくんだろうなあと感じつつ仕事をしています。DeNAも会社としてこの意識が一致していて、お客様視点で変えていこうと団結している今の状態は大切にしていきたいなと思っています。

特に私は、様々な規制に対して物申すような立場にいるので(笑)。それをイヤと言わず一緒になって考えてくれるというか、「交通不全の解消」を実現するために他のメンバーも同じ熱意を持ってくれるのはありがたいです。

そういったメンバーと仕事ができるのも、日々貴重に感じていますね。今後もあくまでお客様視点で、「交通不全の解消」というミッションに取り組んでいきたいと思います。

取材日: 2018年1月31日