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INTERVIEW

MaaSの先の世界をつくりたい−−。
グローバル大手のコンサル出身者がここでやりたいこと

大江 航 大江 航
INTERVIEW

オートモーティブ
事業本部

大江 航
Wataru Oe

MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の概念が浸透する中、新たなモビリティや技術の登場が予測されます。しかし、未来を考えたとき、「MaaSは移動に閉じず、街づくりや人の生活を豊かにするものになる」と話す人がいます。DeNAオートモーティブ事業本部の大江航さんです。

彼はアメリカの大学を卒業後、グローバルのコンサルファームに勤務。アジア地域の自動車・モビリティ領域における経営コンサルを行ってきました。その彼がなぜ、DeNAオートモーティブに移ってきたのでしょうか。そこには「MaaSは移動に閉じない」という言葉が関連してるようです。詳しい意味を、彼のキャリアとともに聞きました。

大江 航

最大手のコンサルで、アジアにおけるモビリティ戦略に関わる

ーー大江さんはアメリカの大学を出て、大手コンサルファームでモビリティ関連の経営に携わってきたんですよね。

はい。大学を卒業後、グローバルに展開する経営コンサル会社に入りました。2011年に入社して2018年に退社するまで、一貫してアジア地域の製造業に関する経営コンサルを担当。最初の4年は東南アジアを中心に、後半の3年はフィールドを中国に移しました。

ーー具体的に、どんなことをしていたんですか。

アジア地域で、主には自動車メーカーに対して「今後どのような車を投入していくか」といった本丸の商品企画・事業計画から、EV(電気自動車)、コネクティッドカー、シェアリングといった新規事業検討の領域までをご支援していました。

その背景には、入社当初、アジアは人口や経済成長による量的拡大を遂げていましたが、直近3、4年ほどはグローバル企業も同エリアにイノベーションやR&D機能を強化するなど、質的拡大が顕著になっていたことがあります。

ーーところで、そもそもなぜモビリティ分野のコンサルに行き着いたのでしょうか。

アメリカでの大学時代が関係してます。当時、学生ながら世の変化を実感しやすい事象が立て続けにあったんです。リーマンショックや北京オリンピック、上海万博、トヨタ自動車のリコール事件など。否応にも、日本の産業や経済は大丈夫かと、自分に何ができるのかとよく考えていました。

なかでも気になったのが、日本経済を支える製造業です。海外での売上比率が高まるなか、製造業がグローバルで戦えないと、日本経済自体が揺らいでしまうと。ですので、私自身は、日本の製造業、モノづくりが海外で戦っていけるよう尽力したいと考えるようになりました。結果、グローバルの経営コンサルファームに入り、入社直後から退職までほぼずっと海外でその課題意識を持ち、最前線で仕事をさせてもらいましたね。

大江 航

中国の市場を見て感じた「次世代のモビリティの姿」

ーーとなると、DeNAオートモーティブに移った理由が気になります。

そうですよね(笑)。きっかけは、3年間の中国での生活やプロジェクトを通じて、自動車産業のあまりにダイナミックなパラダイムシフトを実感したことにあります。

中国では、従来の自動車製造業では諸外国に劣後することから、中央政府の後ろ盾を受けて、地場企業がEV、自動運転やシェアリングエコノミーなど、次なるモビリティ産業を超速で立ち上げ・発展させていました。その結果として、たとえば、自動車メーカーがイチ巨大モビリティサービサーに車両を供給するサプライヤーに甘んじ、従来強みとしてきた顧客接点を失う状況に一部追いやられていました。

それ自体がとても衝撃的で、私は心血注いで携わってきた自動車産業との関わり方を大きく変えないといけないと強く感じました。どうしても、歴史的に産業を作りあげてきた会社には、それを“守ること”が“壊し得るイノベーションを起こすこと”よりも優先されがちです。私自身、そういった自動車産業のクライアントに経営コンサルする延長では限界を感じ、自ら主体的に考え、それを形にできる環境に身を置きたいと考え、別のキャリアを模索するようになりました。

ーーそこからどのようにDeNAとつながったのですか。

モビリティは、規制産業に関わりローカルプレイヤーが強みを発揮する事業領域です。ですので、当時住んでいた海外で黒子的に動くよりも、黎明期ながら短期的に大きく変化を遂げるであろう日本のモビリティ領域に携わっていく方が手触り感をもててベターだと考えました。

そんな中、中島さん(※DeNAオートモーティブ事業本部長 中島宏)からDeNAオートモーティブがこれからやりたいこと、海外への展望などを伺いました。他方、私からも「もっとこうしたらいいんじゃないか」という壁打ちを何度かさせてもらい、気が付けば「それ一緒にやっていこうよ」と自然となったんです(笑)。

とはいえ「中島さんはそう言うけど、現場はどうなんだ」と思い、エンジニアやビジネスサイド、人事とも議論。「あ、これは一緒にやれそうだ」となり、2018年夏にジョインすることになりました。



MaaSを起点に、街づくりや人々の生活を変えていく

ーーそのとき、どんなイノベーションを起こしたいと考えていたんですか。

「MaaSの先の世界を作ること」です。歴史を振り返っても、鉄道網の発展やモータリゼーションと同様に、MaaSも普及した先は「移動に閉じない」んですよね。MaaSというと、いかにヒトやモノを安く早く快適に安全に移動させるか、それをいかにいくつかのサービスをつないでシームレスに実現するかという議論になりがちです。確かにそれ自体が一大テーマであることは間違いありませんが、個人的には、移動が「シームレス」じゃなくても、既存サービスをひと工夫するだけですでに十分解決できる課題も多いのではと考えています。

さらに言うと、そういった「移動体験」が良くなっていくことで人の人生や街が豊かになっていく、というのはやや飛躍があります。むしろ、いかに人の生活や人生を豊かにし、街をより良くしていきたいかを構想した上で、それをテクノロジーやビジネスモデルでアップデートしていきたい。MaaSは住まいや暮らし、働き方や遊び方など、生活や都市構想の前提を大きく変え得るので非常に重要視していますが、あくまでひとつのモジュールに過ぎないかなと思っています。

ーーMaaSの次のフェーズをすでに考えていると。かなり長期的な視点ですね。

はい。なので、今の自分の仕事としては、その考えをもとにDeNAオートモーティブの長期的な事業戦略を立案し、そこから逆引きした新規事業計画などを考えています。

「MaaSの先」を描き実現するには、モビリティ事業と街や生活にまつわる事業の両方のサービス、ユーザーベース、事業者ベース、データベースを持ち合わせていることが重要だと考えています。モビリティサービスだけでは「移動」が意味するものを真に理解できず拡げられないでしょうし、街や生活にまつわる事業だけでは「今後移動がどう変わるのか」を的確に把握できずアクションにつながりにくい。

DeNAはエンタメ、スポーツ、ヘルスケアなど、さまざまな領域で事業をつくってきました。特に横浜ではスポーツタウン構想も掲げ、街や生活に根付いています。ですので、モビリティを基点に新たな街作りを考えていくことも全社横断で進められています。周りを見渡すと、DeNAのようにエンタメ出自で社会課題までをミッションに掲げて、ITとAIで解決していくという会社は、日本ではかなり稀有ですね。

大江 航

モビリティに限らず、大きな視点で仕事ができるメンバーを

ーー街や生活など、幅広い知見を活用していくポジションとも言えそうですね。

はい。オートモーティブ事業本部というと、モビリティにとらわれてしまうかもしれないのですが、これからはより高い視座で、街づくりやライフスタイルから考える仕事になるでしょう。是非そういった視座をお持ちで、モビリティをも活用していきたい方と一緒に働きたいですね。

ーー最後に、大江さんが目指す未来のイメージを教えてください。

私たちは、モビリティを基点とした街づくりを進めて、世界で戦っていく存在になりたいと思っています。きっとそれは、日本の経済を引っ張ってきた自動車産業、製造業の存在をさらに大きくすることにもつながるはずですから。

この20年、インターネットの時代になってから、アメリカではGAFAと呼ばれる巨大なIT企業が生まれ、中国ではアリババ・グループやテンセントが大きく成長しました。これからの時代では、どこで日本企業が戦っていくか。僕らはモビリティや街づくりだと言いたいし、それを次なる日本の産業の柱にしたい。そのために、今からMaaSの先にある世界を見据え、実現に向けて取り組んでいくことが大切だと思っています。

取材日: 2019年2月19日