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「MOBILITY:dev 2019」レポート ~半歩先を行く、タクシー「後部座席タブレット」のUX設計

10月31日に開催された、移動と交通を技術で変えたい、エンジニアのためのカンファレンス「MOBILITY:dev 2019」にて、DeNAオートモーティブ事業本部のメンバーが講演を行いました。

レポート第1弾として、スマートタクシー事業部システム開発部の米山が「後部座席タブレットのUX設計」をテーマに、MaaS時代の移動におけるユーザー体験がどうあるべきかについて話した講演をご紹介します。

飛行機のエンタメシステムを「タクシーの後部座席」でも

タクシー配車アプリ「MOV」の加盟タクシーには、2019年9月現在、東京と神奈川を中心に約8,000台の「後部座席タブレット」が取り付けられています。DeNAがオリジナルで開発したハードウェアのタブレットで、10.1インチワイドの大画面に広告配信や車内案内、コンテンツ配信やキャッシュレス決済機能を日本語・英語・韓国語・中国語で提供中です。

「コンセプトは、飛行機のエンタテインメントシステム。離陸前には非常口や救命胴衣の案内が行われ、上空では映画を楽しめたり、飛行計画を確認できたり、買い物ができたりします。重要なのは、シーンに応じてディスプレイの役割が自動的に変わること。こういう体験をタクシーに持ち込んで、乗客にとって価値のある体験を作っていこうとしています」

ハードウェア面でのこだわりのポイントは3つ。まずは「バッテリーレス」であること。熱に弱いバッテリーを排除することで、高耐久・長寿命化しています。さらに「VESAマウント」を採用して直接ネジ止めできるようにし、見た目もすっきり。さらに「SIMレス」な環境を実現して車内のSIMカードの枚数を減らし、通信コストを大幅に削減しています。

「SIMが挿さっている乗務員端末と、Wi-Fiダイレクトで接続することでSIMレスの環境を実現しました。乗客が乗っている間だけコンテンツを流すには、タクシーメーターの状態をタブレットに伝える必要があったのと、Wi-Fiダイレクトの場合はテザリングよりもシンプルな操作で接続できるのも、採用した要因のひとつです」

すべての乗客に“嫌われない”設計を意識

さらにUX面でも、タクシーメーターとの連動によって、乗務員が特別な操作をしなくともシーンに応じた動作を行う設計になっています。「実車」になると、乗車のお礼やシートベルト着用のお願いを配信。その後広告やコンテンツが交互に流れつつ、目的地に到着しメーターが「支払」になると、料金やキャッシュレス決済の案内が起動するといった仕組みです。

「いまのところアプリでの配車は、タクシー利用全体から見てまだ5~10%程度。このタブレットはすべてのタクシー乗客の皆様に使っていただくサービスなので、“嫌われない”ということをかなり意識して開発しています。広告以外のしっかり楽しんでいただけるコンテンツも入れつつ、プライバシーにも配慮した設計にこだわっています」

UIについても、たとえば昼と夜では車内の明るさが変わるため、夜は白い画面を使わないなど何度もブラッシュアップを行っています。ハードウェアの安全性についても、公的機関にて検証。さらに熱や雨など、メーカーの基準に加えてあらゆる角度からDeNAの独自基準でも確認しています。

公共性の高いサービスだからこそ「半歩先」の精神で

さらに最近導入が行われたのが「モード」という考え方。たとえば葬祭へ向かう人には広告やコンテンツ配信はふさわしくないため、タクシー会社の運行管理者によって「サイレントモード」が選べるように。乗車理由や多様な行動に最適な「モード」を、今後も実装していくといいます。

「将来の構想なので実装は決まっていませんが、たとえば観光モード。観光客が知らなかった観光地を車内で見つけたら、“このままタクシーで行っちゃおう”とタクシー会社にとってもありがたい行動変容を促せる。あとはイベントモード。プロ野球で劇的なサヨナラ勝ちを観戦したあとに、タクシーでその試合のハイライト映像を観ながら帰ることができたら、その余韻を家まで持って帰れる――。そうしたことも実現できたらいいなと考えています」

こうした「半歩先を行く」、つまり奇をてらわずに「ちょっと新しい体験」を提供しつづけること。そして、乗客・タクシー会社・乗務員の三者にとって「利益のバランス」がとれたサービスであること。最後に操作・機能・見せ方などが「シンプル」であること。公共性の高いサービスであるからこそ、この3点を大切にしたいとのこと。

「MaaSとして捉えたときに、今はまだタクシーの外と中の体験に連続性をもたせることができていないのですが、これからも色々な機能を提供して“一貫した移動体験”の実現に貢献できたらと考えています。タクシーに乗った際に、MOVの後部座席タブレットが設置されていたら、ぜひ触っていただけたらなと思います」

これらをもって講演は終了。MOVの「後部座席タブレット」のプロダクト設計を通じて、MaaS時代の“価値のあるユーザー体験”とはどのようなものかを考える時間となりました。

【登壇資料はこちらで公開しています!→https://www.slideshare.net/dena_tech/maasux-mobilitydev

DeNAオートモーティブでは、さまざまなイベントを通して、開発した技術や経験を発表していきます。ぜひこれからもチェックしてください。