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第1回 ITS Tech Study レポート ~ITSを支え、進化させる技術とは~

2018年2月28日、渋谷ヒカリエのDeNA本社を会場にして、第1回ITS Tech Studyが開かれました。

ITS(Intelligent Transport System)とは、車両などの移動体と情報通信し、渋滞の改善や移動に新しい価値を生み出す「高度道路交通システム」。自動運転などの高度化にともない、この分野が活性化し始めています。

その分野における情報交換や学びの場として設けられたITS Tech Study。多様なバックグラウンドを持つ人が活躍できるフィールドでありながら、情報が共有されにくい現状を変えるため、このイベントがスタートしました。

今回は、デジタル地図コンテンツの開発を行うインクリメントP、カーナビなどの経路探索エンジンを開発してきたナビタイムジャパン、次世代の交通サービスに取り組むDeNAの3社から代表者が登壇し、ITS分野の技術を紹介。ここで、その模様をレポートします。

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自動運転に欠かせない「道路ネットワークデータ」の整備過程

まずは、「ITSを支えるデジタル地図整備」というテーマで、インクリメントP コンテンツ本部 企画制作部部長の籾山一俊氏が話しました。

「デジタル地図は、複数のコンテンツを重ね合わせ、一枚の地図として表現しています。住所データやPOI(目標物)を表示したもの、針金のように道路を点と線で示した道路ネットワークデータなど。各コンテンツの情報は公的資料や現地調査などから収集し、それらを合わせて一枚のデジタル地図としています」

講演では、情報収集の具体的な方法論も紹介。その後、自動運転技術を支える道路ネットワークデータの詳細に触れました。

「道路ネットワークデータは、カーナビなどにおける『ルート探索』や『地図表示』、『誘導・案内』などの機能を実現するデータです。基本は、点(ノード)と線(リンク)で道路地図を構成しますが、それだけでは細かな道路の規制や状況は地図に反映されません。そこで、道路に属性情報を付加します。一方通行などの規制情報や、信号機などの案内情報などが一例です」

籾山氏は、中央分離帯のある複雑な道路や曲がりくねった道路に対して、どのようにリンクを引くのか、あるいはどう属性情報を地図に反映させるかといった技術面も説明。最後に、自動運転実現に向けた直近の取り組みについても話しました。

「自動運転では、現状の地図データより複雑な情報が必要です。そこで、現在は高精度地図データの開発をしているダイナミックマップ基盤地図会社にも参画しています。その整備にあたっては、特殊車両を走らせ、レーザーレーダーや光学カメラなどを使い精細な映像やデータを採取。地図に反映していきます」

直近の活動とともに今後の展望を話して、籾山氏は説明を終えました。

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「経路探索エンジン」の性能に関わる“コスト計算”の技術

続いて、ナビタイムジャパン ルートグループの福士達央氏が登壇。「NAVITIMEの経路はこうして作られる 〜4100万人の移動を導く経路探索の流儀」と題して、道路における「経路探索エンジン」の開発手法を紹介しました。

「経路探索エンジンは3つの要素で構成されます。1つ目は、インクリメントPさんからお話のあった『道路ネットワークデータ』で、2つ目は『経路探索アルゴリズム』です。これはネットワークデータから最適な経路を高速に算出する技術。そして、3つ目が『コスト計算』です。『時間優先』『距離優先』などの要望に応じ、どの道路がもっとも価値が高いかを決める技術となります」

当日詳しく説明したのが、コスト計算の理論。時間や距離などのコスト要因に対し、ユーザーの優先に合わせて探索時に掛ける係数を変えるなど、その“裏側”が細かく紹介されました。

さらに、経路探索エンジンは一度作って終わりではなく、日々の改善が重要とのこと。そのための工夫を以下のように話しました。

「改善サイクルの構築は重要なテーマで、ナビタイムでは、推奨されたルートに対してユーザーが指摘する専用窓口を設けています。さらに、ルート改善専用チームを配置し、それらの指摘を調査・分類・集計。指摘を受け付けるだけでなく、改善具合まで詳細にチェックしています。

また、新たな道路の建設や既存道路の変更は全国で日々行われます。それらをより早く地図に取り込むため、ユーザーの走行ログとなるプローブデータを使って、新規道路などの情報を地図に反映できる仕組みを作りました。これにより、地図の更新スピードは2ヶ月に1回から1日1回へと向上しています」

このような最新の取り組みも出席者と共有。今後高めたい技術などを話してプレゼンを締めました。

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機械学習で道路情報を分析する。そのメカニズムとは

最後に、「機械学習を活用したモビリティサービスの地図データ整備」について、DeNA オートモーティブ事業本部 基幹システム開発部の織田拓磨が講演。前半では、海外におけるITS関連の最新動向に触れました。

「先ほど出た自動運転用の高精度地図について、海外では車につけたカメラで映像を撮影し、クラウドソーシングで取り込むシステム『Lvl5』が登場しています。クラウドソースでデータを取り込む仕組みは、この分野で必須となるでしょう。また、自動運転では、車の停車可能な場所や路肩の詳細情報も必要となります。これについても、アメリカのトロントなどでデジタル化のプロジェクトが進んでいます」

海外の事例について、プレゼンの中で詳細を説明。その後、織田はDeNAにおける地図データ整備の取り組みを紹介しました。

「機械学習を活用した地図データ整備を進めています。1つは車両停車位置の検出で、車載カメラで撮った画像を収集し、機械学習によって停車可能な場所を画像から判定できるようにしています。そのほか、大量のプローブデータから走行車の速度遷移も分析しています。速度遷移を調べれば、ある道路のこの地点では一定時間止まることができるなど、自動運転に必要な道路特性が抽出できます。これも機械学習を使い、道路属性の情報として地図に反映します」

その後、プローブデータから道路特性を分析する機械学習のモデルや具体的な計算式を説明。ほかにも、経路探索における機械学習の方法論や課題などに触れ、説明を終えました。

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プレゼン終了後は、参加者による懇親会を実施。企業の枠を超えて、活発な意見交換をする様子が見られました。当日のプレゼン資料は、ホームページで公開中。また、ITS Tech専用のSlackも立てられています。イベントを含めて、今後も継続的な情報共有が行われていくようです。