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INTERVIEW

「日本No.1のモビリティプラットフォームを作る」
経営戦略の担い手が見据える、DeNAの“勝算”

園田 紘章 園田 紘章
INTERVIEW

オートモーティブ
事業本部
経営戦略部 部長

園田 紘章
Hiroaki Sonoda

さまざまな事業を展開するDeNAオートモーティブでは、全体を俯瞰し、一つひとつの事業の戦略や方向性を決定する人がいます。DeNAオートモーティブ事業本部 経営戦略部 部長の園田紘章さんです。

2019年3月まで、大手コンサルで自動車関連企業や電力業界の“企業再生”を手がけた園田さん。またその間には、福島原発の第三者委員会の調査員を務めるなど、異色のキャリアの持ち主です。そんな園田さんは、この会社に来て驚いたこととして「slack」でのエピソードを挙げます。そしてそれは「モビリティ競争に勝つ要素になる」とも。詳しい話を聞きました。

園田 紘章

slackに見た「現場」の足腰の強さと、事業への熱意

ーーコンサル出身の園田さんは、さまざまな会社を見てきたと思います。ここへ来たとき「slackを見て驚いた」というのは、どんな意味でしょうか。

社内のslackを見ると、各サービスに対するお客さまの声や競合情報が現場からものすごいペースで集まっていました。情報収集力は素晴らしいものがあり、現場の人が足で稼いだ情報がslackに集約されていたんです。見ているだけで楽しいくらい(笑)。

ーー社内のslackの活発さに驚いたということですね。

はい。私は2005年の新卒から2019年3月にここへ来るまで、2つのコンサル会社でたくさんの企業を見てきました。そこで思う「良い会社の条件」は、現場の“足腰の強さ”です。現場がしっかりとお客様に向き合い、足繁く情報を集めて来れる会社は、一人ひとりの意識が高く、市場の変化に対する反応が早いですし、現実的な市場のヨミや目標設定ができるので、数字の達成率も高くなります。

特にモビリティ業界は、凄まじい速さで日々状況が変化しています。コンサル時代、私は自動車関連企業やサプライヤー企業の企業再生をいくつか行いました。そこで市場の変化の凄まじさを実感していましたし、お客様も「どうこの変化のスピードについていくか」で悩んでいました。その中で、これほどリアルタイムに現場から情報が上がってくるのは、この会社の大きな強みだと思います。

ーー変化が激しい業界なので、特に重要ということでしょうか。

そう言えると思います。何よりそれだけ情報収集できるのは、関わる人が事業を愛しているから。slackを見ながら「みんなオートの事業が好きなんだな」と思いました。

コンサル出身だからこそ言えますが、二次情報から市場・競争環境を調べる場合、厳密にはリアルタイムの情報からどうしてもタイムラグができます。調査情報はまとめるまでに時間がかかりますし、インタビュー調査も同様。安定している業界なら気にならないのですが、激変するモビリティ業界では数か月前の分析では役に立たなくなるのです。

その意味で、現場の足腰の強さによって情報がリアルタイムに集まる環境は心強いですし、逆にこれだけ強い現場がいるのなら、経営さえ間違えなければ勝てるとも思います。経営判断する立場としては言い訳できないですね(笑)。

ーー今はどんな仕事をしているのでしょうか。

私はコンサルの経験をもとに、ここで経営戦略部を担っています。それぞれの事業戦略が適切かどうか、事業部全体でのディシジョンメイクや方向性の検討、戦略の策定をする役割です。

特にオートの領域は競争環境も事業成長も変化が著しい。一度立てた戦略や方針が今の市場・競争環境でも有効か、常に見直すことが必要です。事業計画や経営としてモニタリングするKPIをはじめ、プロダクト開発の優先順位や予算組み、リソースの割き方など。事業に関わるメンバーが、今どこを向いて仕事に取り組むべきか、随時状況が変わる中で今の状態が適正かどうか、たえず問題提起をして方向性を決めるのが1つの仕事です。

園田 紘章

「アメリカに習え」はダメ。その国なりのやり方で攻める

ーー改めて、これまでに勤めたコンサル会社ではどのようなことをやられていたのでしょうか。

主に行ったのは、企業再生です。先ほど話したように、自動車関連企業や製造業が多かったですね。再生案件なので事業面はもちろん、財務面も支援していました。企業の再生計画として、はじめに事業戦略を描き、それを実現するためのファイナンスプランをつくります。事業の売却や構造改革によってリソースを成長可能性の高い事業に集中させ、成長戦略を作るのと同時に、財務面では銀行との交渉や、ニューマネーを入れてくれるファンド等の新規の投資家との交渉を進めていく。そうして再生の道筋を作った上で、支援先の企業が成長軌道に乗るまで、経営の意思決定を支援することもありました。

ーー財務面も見ていたんですね。

そうですね。こちらにジョインしてからもその役割を担っています。オートモーティブ事業はまだまだ投資フェーズなので、事業の特性を踏まえた資本政策を事業本部の立場で考え、経営陣・取締役とのコミュニケーションや、外部の事業パートナー候補の企業様との交渉を担当しています。先ほど話した「戦略の策定」と「ファイナンスプラン」の2つが主な仕事です。

ーーコンサル時代の経験をそのまま生かしている形ですね。

はい。特に今の会社でこれまでのキャリアと親和性が高いのは、経営の意思決定をリードする能力です。企業再生ではここが一番重要なポイントで、じっくり検討していると資金が枯渇してしまいますから、スピード感をもって決める必要がありました。その経験があるので、短期間で決断を下し、経営層と合意形成しながら事業を推進していく今の役割は合っていると思います。

ーーちなみに、前職の途中では福島原発事故の第三者調査委員会にも所属したと聞きました。

はい。2012年の9カ月間、原発事故調査委員会の調査員として国会で勤務し、その後は原子力損害賠償支援機構という東京電力の株主にあたるファンドのアドバイザーとして、東京電力の再生を支援していました。その時期は、コンサル会社を復職条件付きで一度辞めて、公務員になったのです。

そこでの経験は、色々なことを考えるきっかけになりました。そこで感じた、政治・行政・産業の関係性はどうあるべきなのかという問いに答えを出したくて、アメリカに2年ほど留学しました。そこで学んだのは、産業の発展と政治構造は表裏一体になっているということです。例えば、日本における電力業界の成り立ちやミッションとアメリカにおけるそれは、まったく異なるんですね。その違いが業法の違いを生み、産業構造の差になり、それが事業者の行動原理や政治・行政との関係性の違いを生んでいます。どちらが正しい、という議論をするのではなく、現実の構造を前提に有効なアプローチを考えることが必要だと気づきました。

モビリティ業界で考えると、今世界中でモビリティの変革が起きていますが、「アメリカや他の国でこうしているから日本でも同じようにやろう」という考えでは話は進みません。なぜなら、国によって自動車・モビリティ産業の発展の歴史や社会における位置づけが異なるからです。業法や産業構造も異なりますし、消費者・労働者のペインや政治との関係性もまったく別物です。であれば、他国と同じようにやるのではなく、日本の産業構造や政治力学、そして歴史を見ながら日本ならではのモビリティサービスの将来像を現実的に考えるべきです。その視点は、モビリティの変革期において非常に重要だと思っています。

ーーその後、なぜDeNAオートモーティブにジョインしたのでしょうか。

留学から戻り、もとのコンサル会社に復職しました。そこで昔から担当していたクライアントの案件を2年やって。思い入れの強い会社だったので、自分の中で一区切りついた感覚がありました。

加えて、モビリティ業界の変化を見る中で、その変化に適応する立場ではなく、自分がリードする立場に回りたいと。ビジネススクールでスタートアップが世界を変えていく仕組みを学んだことも刺激になりました。それで、変革をリードできるような、強いプロダクトを持つ会社にいくことを検討し始めたんです。

園田 紘章

日本のモビリティプラットフォームを作るために、必要な人とは

ーー最終的な決め手はどんなものでしたか。

スタートアップもいくつか検討しましたが、これらの組織では、私のようにディシジョンする人材はたくさんいりません。一方、DeNAのオートモーティブ事業本部はスタートアップのような事業を次々に生み出して成長しながら、会社全体は上場企業で組織も大きい。事業を推進する人材が複数求められます。また、上場企業としての論理を理解しつつ、スタートアップとしてのオート事業を成長させる道筋を事業・財務の両面で描くという役割が、自分の経験や志向にフィットすると感じたことが決め手になりました。

実際、今は意思決定をする人材がもっと必要な状況です。私の業務は先ほど話した通りですが、同じ役割をできる人がもっといてほしいので。

ーー具体的にはどんな人を望みますか。

事業会社で自ら事業判断をしてきた方や、ハンズオンでのコンサル経験がある人は良いと思います。コンサルもさまざまで、たとえば3ヶ月ほどのスパンで戦略や事業計画を作ってきた方の場合、ここではより短期間での意思決定に慣れる必要があるかもしれません。3ヶ月の間に環境がめまぐるしく変わりますから。

むしろ、一度目標を定めたとしてもそれで終わりにせず、事業にコミットしてリアルタイムに意思決定する。時には、途中で自らプロジェクトを廃止する、方針転換する。そんな決断をしてきた方は良いかなと。「ハンズオン」とはそういう意味です。もちろん、経験はなくても、そういう事業環境に自分を置きたいという人も大歓迎です。

あとは、財務面ですね。それも英語でできる人が理想です。モビリティサービスを拡大するために、今後グローバルでの交渉も必要になるでしょう。

ーー今のお話に絡めて、最後にDeNAオートモーティブのビジョンをどんな風に描いていますか。

ここにジョインする前と比べて、よりポジティブに事業の将来性を見ています。日本のNo.1 モビリティプラットフォームを作るという目標は、かなり現実的になってきたのではないかと思います。

ーーそれはどんな背景からでしょうか。

事業の広がり方が顕著な点です。たとえば、タクシー配車アプリ「MOV」は、一般の方がアプリを使って配車を依頼します。ユーザー数の増加に伴い、人々がモビリティサービスを活用する際の面を押さえつつあります。MOVを利用するタクシー事業者様も急拡大していて、人々の移動情報の可視化が進み、ユーザー・事業者様の両方に対してより新しいサービスを提案できるようになっています。また、カーシェアリングサービスの「Anyca」によって、個人の車の所有・利用のあり方の変革もリードしています。

こうしたプラットフォームを活用して、他社との連携も進んでいます。SOMPOホールディングス様とのクルマ定額サービス「SOMPOで乗ーる」はその代表。プラットフォームの上でさまざまなサービスができつつありますし、今後更に拡大する予定です。デジタルな領域に強いDeNAと、リアルな領域に強い伝統的な企業が組むことで、想像以上の化学反応が起きている。新しい可能性が広がっていると感じます。

個人的な感触ですが、日本のモビリティプラットフォームを着々と構築している手応えがあります。だからこそ、その拡大に向けてスピーディに意思決定できる仲間が増えていけばと思っています。

取材日: 2019年9月5日