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自動運転の先進国フランスで、エンジニアたちがつかんだもの オートモーティブで成功するための「グローバルな提携」と「現場主義」

オートモーティブ事業が進めている「ロボットシャトル」のプロジェクト。ロボットシャトルとは、ドライバーなしで乗客を運ぶ完全自動運転車両の交通サービスで、人手不足などにより公共の交通手段が減少する中、課題解決の一手として期待されています。

DeNAはこの事業において、フランスのEasyMile社と提携。世界最先端の技術を取り入れながら実用化を目指しています。そして今回、プロジェクトメンバーがフランスに赴き、今後の課題や方向性をEasyMile社と話し合ってきたとのこと。さらに、自動運転が進むフランスの最新サービスにも触れてきました。

フランスの地で、メンバーは何を得たのでしょうか。そして、現地に赴く意義とは? プロジェクトに携わる基幹システム開発部のT.IさんとH.Hさんが振り返りました。

 

より実用に近いシーンで行われているフランスの実証実験

 

ーーまずは今回、フランスに出張した目的について教えてください。

T.I:DeNAのロボットシャトルは、フランスのEasyMileの車両を使っています。ですので、基本的には2社が連携をしながら開発を進めているんですね。

この事業において私は、実証実験などのプロジェクトを横断で管理したり、どういう技術をいつまでに作るかというプランを立てたりする役割なのですが、そういったビジョンについて、お互いの意識共有や、そもそもEasyMileがどのような考えで今後進めようとしているかをディスカッションしに行ったんです。これが最大の目的でした。

H.H:僕自身はシステムのアーキテクトをやっていて、ロボットシャトルはDeNAのシステムとEasyMileの車両とのつなぎこみが重要になります。ですので、お互いどのようにシステムを構築しているのかといった情報共有から、仕様の決定、特定のシステムをどちらが作るかという具体的な分担決めをしたいと考えていました。

ーーそもそも自動運転やロボットシャトルの分野において、フランスやEasyMileはどのような存在なのでしょうか。

H.H:フランスは、交通の自動化について国を挙げて推進しているイメージがありますよね。

T.I:それは間違いないですね。DeNAも実証実験をいくつかやっていますが、多くは数日単位での実施。でもフランスは、各社が自治体と組んで、長期間がっつりやっているんですね。なので、この分野においては世界的にも進んでいると思います。その中でも、EasyMileとNAVYAという会社が二大メーカーの位置付けになっていますね。

実は今回、そういった最先端のサービス、実証実験を直に見るのも大きな目的でした。先にその話をすると、私たちがいた期間だけでも、国内でいくつかの実証実験が行われていたんです。なかには半年という長期間で実験をやっているものもありました。

H.H:EasyMileやNAVYAの実証実験を間近で見たのですが、日本での実証実験とはかなり違う形で運行しているので、大きな学びになりましたよね。

ーー具体的に、どのあたりが日本の運行と違うのでしょうか。

T.I:実際の利用シーンにかなり近い形での実験をしていたんです。ロボットシャトルのすぐ近くに一般の歩行者がいたり、かなり細い道を使用したり。しかも、警備員がついていないケースもありました。一般車が前にいる環境の中で徐行をかけて進むケースも珍しくなかったですね。いわゆる日常の交通に近い形でちゃんと運行していたんです。

H.H:日本の実証実験は、エリアにかなり規制をかけたり、警備員を細かく配備したりして、少し日常の環境とは遠いところでやっているのが実情です。でもフランスは実用化に近いところでやっていましたね。

※写真の車両はフランスで走行しているロボットシャトルと同じ車種

 

世界的メーカーだからこそ「本気度を伝えること」から始まる
ーーそういった部分も、フランスが進んでいることにつながるのかもしれませんね。

H.H:でもそれは、日本が技術的に遅れているわけではないんです。そもそも、車両自体はDeNAも同じものを使っているので。どちらかというとお国事情というか、考え方の問題だと捉えています。日本は、実験の際に細心の注意を払って規制をかけますし、少しでも危険がある環境ではやりません。でも、フランスの場合は人が近くにいることを踏まえてやっているといえますね。

T.I:もちろん、フランスも事故は起こさない前提での実験なのですが、日本よりはリアルに近い環境です。なので、現実的なノウハウを蓄積しやすいと感じました。日本はその環境ではないので、どうやれば安全に運行できるかという知見を獲得しにくい。そこはうらやましいですし、だからこそ、リアルな実証実験の中でスムーズに運行しているところに価値を感じました。

ーーそういった背景の中で、EasyMileに直接出向いたわけですよね。

H.H:先ほども言ったように、EasyMileはフランスの中でも主要メーカーです。オーストラリアやドバイ、台湾、北米、ヘルシンキなど、かなりの地域で実証実験をやっているんですね。特にオーストラリアでは、すでに公道を一般車両として走るケースも出ています。DeNAを含め、各国の企業と技術提携を結んでいる企業です。

T.I:その中では、相手からの提案や連絡を受け身で待っていてもダメですし、こちらの技術レベルや計画の進捗、さらには「DeNAが本気でこの事業に取り組んでいる」ことを伝えないと、技術提携として進んでいかないんですよね。

あくまで我々は、日本で本気で売ろうとしていて、しかもタクベルやロボネコヤマトなどの開発を通じて、オートモーティブ領域においても技術的に高いレベルにある。それをわかってもらわなければいけません。なので、今までやってきたシステムや構築したものの実績を伝えながら、ディスカッションを通してお互いの連携を図りました。

H.H:僕自身も、システムのつなぎこみにおける様式決めや、一つ一つのスケジュールがどんな温度感で進んでいるかを確認していきましたね。

T.I:2日ほどディスカッションした結果、EasyMileも改めてDeNAとの提携を重視してくれましたよね。たとえば、会議の後にチャットの専用チャンネルもできて、今は現地のエンジニアと毎日やりとりしていますから。

H.H:オートモーティブはアライアンスありきの事業なので、やはり両社のコミュニケーションがカギなんです。たとえば今回のディスカッションで、自動運転車輌の信号制御について話し合いました。信号制御とは、「青」や「赤」という信号の情報をどう車両に受け渡して、運転につなげるかというもの。こういったことについて、図を描いてディスカッションを行ったり、様々なシチュエーションに対して細かい検討を行うようなものはチャットでは難しいですですし、実際に会って話さないと深いところをすり合わせられません。

 

リアルテックだからこそ、サービスに触れることが価値になる

 

ーーディスカッションを終えて、手応えは得られたでしょうか。

T.I:そうですね。我々の本気度や技術レベルを伝えていくと、向こうも身を乗り出してくれました。

H.H:エンジニアの人がかなり興味を持ってくれて、信号のシステムについては「俺が参加していい?」といってくれたり、途中から会議に参加してきたり。一緒にやろうという前向きな形になりました。

ーー各国の企業とグローバルに提携しているEasyMileに対して、DeNAの地位を上げていったということですよね。フランスに赴いた意義は大きかったのではないでしょうか。

T.I:そう感じていますし、僕らの事業がそれをできるのはすごく喜ばしいことですよね。というのも、オートモーティブ事業はまだ利益化しているわけではありません。通常、そういう新規事業は結果が出るまで予算を絞れという話になるのですが、DeNAの企業文化は違いました。

私はこの会社に来てまだ短いのですが、必要な事業で、きちんと設計が組まれていればお金を入れてくれる文化なのだと思いました。そもそも、エンジニアのメンバーがこれだけ海外に行くのは珍しいことですからね。

ちなみに、現地では英語でディスカッションしたのですが、H.Hさんも英語がしゃべれない中で頑張ってましたよ(笑)

ーーそうだったんですか?

H.H:はい(笑)。とりあえずホワイトボードに図を書いて、必死に「This! This!」と説明してました。

T.I:でも、エンジニア用語はほとんどが英語なので、図があればけっこう伝わるんですよね。

H.H:そうですね。わからない部分は、英語をしゃべれる同僚にフォローしてもらえますし。なので、エンジニアの場合は、そこまで英語ができなくてもグローバルの中でやりとりできると思いました。しゃべれる人たちのサポートもあるので(笑)

ーー最後に、改めてこのフランス出張の成果をどう感じますか。

T.I:やはり、EasyMileにDeNAの本気度や技術レベルを伝えて、それを認めてもらえたことが大きいですね。その証が、毎日のようにチャットで向こうのエンジニアとやりとりしていることだと思います。今後、開発のスピードは大きく進むはずです。

H.H:実証実験の様子を見たり、EasyMileの話を聞いたりして、最先端のサービスに触れてきたことも価値があると考えています。オートモーティブは、車両という“リアルテック”が対象なので、それを見て触れることで、仕様のアイデアや車への要望、さらには「こんな体験ができそう」という発想が生まれますよね。

僕たちはシステムやサービスをつくる側ですが、大切なのは使う側の目線で自分たちの中にインプットしていくこと。それは必ず開発に生きてきます。ただそのためには、実際にサービスに触れないといけません。だからこそ、今回のような体験ができる環境は大切だと思います。